院長のご挨拶
院長 鬼塚 俊明
精神科は、児童から老年期まで、生物学的な面から心理学的面まで多様な領域の経験が必要です。九州大学精神科は、伝統的に森田療法や行動療法など精神療法でも有名な教室で、入局以降、十分なトレーニングを受けており、心理療法にも精通しています。一方で、一人で経験できることは限られているため、標準治療である治療ガイドラインに精通する必要もあります。現在、精神科治療ガイドライン普及プログラムの研究のコアメンバーに入っており、私は統合失調症のガイドラインに沿って、全国の処方が行われているか検証しています。具体的には、持続性抗精神病薬注射剤が適正に使用されているかを検証しています。このように治療ガイドラインの普及に注力しています。
精神疾患は慢性的経過をたどることが多いのも事実ですが、近年では、前駆期を含む初発患者に対する適切な早期介入により、長期予後が改善されることがわかってきました。私自身は、統合失調症のリカバリーについて、日本の統合失調症治療の主要メンバーとともにその意見をまとめて世界に発信しました(Onitsuka et al., Current concepts, findings, and future research directions toward recovery in schizophrenia. PCN, 2022)。今後も、精神疾患の早期診断・早期介入を目標として積極的な診療活動と啓蒙活動を推進していく所存です。多岐にわたる精神科の問題に対応するために、精度の高い診断と高度な治療が可能な中核機関として、医療機関はもちろん関係諸機関とも密に連携し、地域社会の中で信頼される施設として更に当院を発展させたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
令和5年10月1日